さて、この映画について語る前にもう少し前置きします。ドキュメンタリー映画と聞くと、「真実を語るノンフィクション」というイメージを勝手に抱いてしまうのですが、実際にはそうではないようです。「報道」と「ドキュメンタリー」の間には大きな隔たりがあり、「ドキュメンタリー」とは真実の映像をどれだけ”演出”するかに監督さんの腕がかかっている、とのことです。
だから私もザウパーさんの「負の部分だけを切り取って見せたかった」という手法自体に異を唱えるつもりはありません。しかし映画の中で使われている映像の中には、そのヤラセや煽りに思わず激怒してしまうような場面がいくつかありましたので解説を加えながら説明します。映画の内容について書いていますので、映画をこれから見る方は読まない方がいいかもしれません。
・食べ物を奪い合うストリートチルドレン
ジャケットにも使われている映画の重要な場面の1つ、荒んだストリートチルドレン達が食事を奪い合うシーンですが、これは子ども達のケンカをザウパーさんが誘発させたとしか思えません。というのも、タンザニアでは白いご飯は大変なごちそうで、普段は皆ウガリと呼ばれるトウモロコシの粉を練って作った料理を食べています。お米を買える程の大金を持っているとはとても思えないストリートチルドレン達は、どこからこのおいしいご飯を得ることができたのでしょうか。このご飯は誰が用意したのでしょう。誰がお腹のすいたストリートチルドレンの目の前に、明らかに全員分には足りない中途半端な量のご飯を鍋ごと置いたのでしょう。
私はこのシーンを見るたびに、殴り合う子ども達の目の前で会心の笑みを浮かべた監督さんの顔がちらついてなりません。
・誰もが戦争を望んでいる
何度か登場する目の血走った警備員ラファエルさん。映画の中ではタンザニア人を代弁するような役柄ですが、このラファエルさん、明らかに人として”おかしい”ですよね。「泥棒が来たらこの毒を塗った矢で殺す」と衝撃発言連発していますが、ザウパーさんにとってはあまりに美味しいタンザニア人だったのでしょう。どんな事情があるのか知りませんがなぜか「英語が話せ」、人を殺したいと自慢する程「過激な思想を持っている」、観客をだますにはもってこいです。
まず胸を張って言えることですが、大抵のタンザニア人は戦争は望んでいません。ラファエルさんは「戦争が起こると兵士が必要になるから、みんな戦争を望んでいる」と暴言を吐いていますが、単なる彼の個人的な意見です。タンザニア人はアフリカ諸国の中でも自国に内戦の歴史ないことを誇りに思っていますし、私がタンザニアの中学校で行ったインタビューでは、タンザニアの自慢として「国立公園などの自然」や「アフリカ最高峰の山キリマンジャロ」をあげる生徒がいる一方、「平和」と答える声も数多くありました。
特に初代大統領ニエレレさんの行った「ウジャマー(友愛)政策」はタンザニア人の間では誇れる伝説のようにさえなっていて、この政策によって百を超える部族がいるにもかかわらず、タンザニアでは部族間の内戦が一度も発生せず平和を維持できたと考えられています。もと高校教師であったニエレレ大統領は、今でもタンザニア人から「ムワリム ニエレレ(ニエレレ先生)」と呼ばれ慕われ続けている事実が、平和を愛した大統領と、それを誇りに思うタンザニア人の一面を端的に表していると思います。
どの国にも過激な思想を持った方はいますのでタンザニア人の全員が平和ばかりを願っているとはけっして思いませんが、「皆が戦争を願っている」とつぶやくラファエルさんはごくごく少数派です。人も殺したがっているようですしね。
・肉食のナイルパーチがビクトリア湖の在来種を駆逐した
ナイルパーチが在来種を捕食し急激に繁殖したのは事実です。しかし食物連鎖を考えれば、ナイルパーチのみが繁殖し続け生き延びるということはあり得ません。在来種が減るとそれを捕食するナイルパーチも餌となる魚がなくなり減るので、最終的にはお互いの数がある程度維持できる環境へ平衡していくのが食物連鎖の仕組みです。
実際にムワンザの特産品は今も昔もダガーと呼ばれる小魚の煮干し(実際には煮てはいないので小魚干しか?)です。日本の青年海外協力隊ボランティア事業でも、このダガーを加工し付加価値の高い商品開発を目指す食品加工の隊員を派遣しています。私もこの隊員のお手伝いで、ビクトリア産ダガーの仕分け・袋詰めをしました。
長くなってきましたので、続きは次回に持ち越しましょう。













